先週発売された『Oracle Cloud Infrastructure エンタープライズ構築実践ガイド』を読んだので、感想を書きました。
概要
この書籍は、IaaS / PaaS を提供する Oracle のクラウドサービスである Oracle Cloud Infrastructure (OCI) の解説書です。
Amazon で調べたところ、他に Oracle Cloud Infrastructure の解説書はなさそうで、こちらが現状唯一の書籍になるようです。
Chapter ごとに面白かった点や感想を書いていきます。
Chapter 1
OCI の基礎を解説する章です。
ネットワーク仮想化を別のハードウェアで実行しているなど、OCI が内部的にどう設計されているかも書かれており、なかなか面白かったです。
AWS や GCP といった有名なクラウドプロバイダと比べてどのように思想が異なるかを感じ取ることもできました。
Chapter 2
コンピュート、ネットワーク、ストレージといった OCI のコアサービスを解説する章です。
個人的に面白かった点としては、Oracle Autonomous Linux のゼロ・ダウンタイム・アップグレード、自動セキュリティパッチが挙げられます。 AWS の EC2 や GCP の GCE などを使う際にも OS のパッチをどうするかは検討点ですが、そこが簡単に運用できそうなのは便利そうだなと思いました。
また、IPSec VPN が無償であるといったことも書かれており、公式ページ に書かれているように、確かに AWS などよりも安い部分は結構あるのかもしれません。
この章は AWS や GCP などの基本サービスについて知っていればサクサク読め、それらとの違いも分かって面白いです。 OCI では各種データがデフォルトで暗号化されているなど、エンタープライズシステムで要求されるセキュリティを強く意識しているように感じました。
Oracle Cloud と OCI の関係や ID のフェデレーションについても解説されており、実際に使う際にも役立つと思います。
Chapter 3
データ関係のサービスを解説する章です。
Oracle と言えばやはりデータベースであり、OCI でもデータベースに非常に力を入れられることが分かりました。
Database Cloud、Exadata Cloud などの解説に加え、フルマネージド・サービスである Autonomous Database について手厚く解説されています。
Autonomous Database について、個人的にはスケールアップ / ダウンまで自動化してくれる部分が想像以上で驚きました。
パブリックなエンドポイントであれば Free Tier でも使えるとのことなので、まずは Heroku の DB として試したりしてみてもいいのかもしれません。
Chapter 4
OCI での高可用性設計と、オンプレミスからの移行について書かれた章です。
高可用性設計で登場する「可用性ドメイン」については、Azure の可用性セットとかなり似ているので、Azure を知っていればスラスラ読めると思います。
オンプレミスからの移行の中では DB をゼロダウンタイムで移行する方法なども書かれており、なかなか面白かったです。
Chapter 5 ~ 7
Free Tier の利用方法や、サンプルシステム構築のハンズオンについて書かれています。
画面キャプチャなども豊富なので、実際にはさわってみないにしても結構雰囲気を味わえます。
かなりのボリュームになっているので、これだけ実際に試せば OCI がある程度理解できるのではないでしょうか。
おわりに
OCI は存在は知っていましたが、特徴や提供されているサービスなどまでは知らなかったので、読んでみてなかなか面白かったです。
一時期コンテナ関係の勉強ばかりしていたおかげで OCI と言えば Open Container Initiative と思っていた私ですが、今後は OCI という単語を聞いたら Oracle Cloud Infrastructure も候補に上がるようになりそうです。