今月発売された『ITエンジニアのやさしい法律Q&A 著作権・開発契約・労働関係・契約書で揉めないための勘どころ』を読んだので、感想を書きました。
この本は、エンジニアとして活動後に弁護士になった方が書いたものです。
- 著作権の落とし穴
- 開発契約の落とし穴
- 労働関係の落とし穴
- 契約書の要チェックポイント
の 4 章構成で書かれているので、各章について感想を書いていきます。
第 1 章. 著作権の落とし穴
ソースコードや画像、文章の著作権であったり、OSS のライセンスなどの基礎知識が解説されています。
著作権は IT エンジニアが確実に関係するにも関わらず、なかなか知識を仕入れにくい分野だと思います。
「コピーレフト」や「GPL ライセンス」といったものが何を許可していて何を許可していないのかなど、曖昧になりがちな点がしっかり解説されており、非常に勉強になりました。
第 2 章. 開発契約の落とし穴
請負契約と準委任契約の違いといった基本的な点から、契約の解除、下請けについてまで一通り書かれています。
また、2020 年 11 月に発売された書籍のため、2020 年 4 月 1 日に改正が施行された民法の、契約不適合責任や提携約款についても書かれています。
開発契約で問題が発生した場合の考え方についても様々なパターンが Q&A 形式で書かれており、非常に理解しやすかったです。
第 3 章. 労働関係の落とし穴
裁量労働制や副業についてなど、IT エンジニアが関係しやすい、会社に勤める上で持っておくべき法務知識について書かれています。
自分が勤めている会社と法的な争いになることは想像したくないと思いますが、ちょっとしたことが気になった際などには参考になるのではないでしょうか。
第 4 章. 契約書の要チェックポイント
「利用規約」、「プライバシーポリシー」や、「請負契約書」、「準委任契約書」などの各種契約書などについて、作成時の注意事項や、受け取ったときのチェックポイントが具体的にまとめられています。
一つ一つ全て頭に入れるのは難しいかもしれませんが、実際にそういった文書を手にした際に、こちらを参考にチェックするような使い方もできると思います。
法的文書の基本的な考え方についても解説されています。
おわりに
全体として非常に噛み砕いた言葉で書かれているので、法律の専門家でなくても読みやすい本でした。 IT エンジニアが関わりやすい法律について幅広くまとめられているので、法務面の知識が足りないと感じている方は手にとってみるといいのではないでしょうか。
逆に言えば、幅広い内容が書かれているため、各章の内容についてはそれぞれの専門的な書籍の方が詳しい解説になっています。 例えば、この本では OSS のライセンスについては GPL だけが解説されています。 他のライセンスも含めてより詳しく学びたい場合は『OSSライセンスの教科書』などが適していると思います。
とはいえ、IT エンジニアという立場で幅広く法務面の基本を学ぶ上では非常に良い本でした。 コラムも「なるほど〜」となる豆知識が多く、読んでいて面白かったです。