一昨日発売された『スケールフリーネットワーク ものづくり日本だからできるDX』を読んだので、感想を書きました。
概要
タイトルになっている「スケールフリーネットワーク」というものを活用して、日本が今後どのように成長していくべきかを書いた本です。
主著者はシーメンスを経て東芝の CDO (最高デジタル責任者) に就任された方であり、その経験から、ドイツや東芝での事例についても書かれています。
スケールフリーネットワークとは
私は「スケールフリーネットワーク」という単語自体初めて聞きましたが、この言葉自体は昔からあるものだそうです。
グラフにおけるノード間のリンクが一部のノードに集中する構造のことで、Web のリンクの構造や、人間関係などで見られるものを指しています。
書籍の中では、Amazon や Google のようにロングテールを生かすような構造も近いものとして解説されています。
日本のとるべき戦略について
日本が IT に非常に弱く、このままでは非常にまずいというのは私も含め多くの方が感じていると思います。
この書籍では、GAFA をはじめとする多くの企業に大きく引き離されている状態からどう戦っていくべきかが書かれています。
前提として、デジタル世界の発展が一段落してきたため、今後はフィジカルとデジタルの混合的な部分が発展していくものとしています。 例えば IoT などの領域です。
そんな中、日本には「ものづくり」の技術のタネが多く存在しているため、それらをデジタルと組み合わせて DX を推進することで戦っていけるのではないかと検討されています。
オープンであること
書籍の中では、「ものづくり」の力を生かして DX を進める上で、「仕様を公開することでデファクトスタンダードのポジションを取りに行く」という動き方も重要だと書かれています。
技術を公開することには反対意見を唱える方もいると思いますが、この本では「誰でも作れるものは公開し、自分達にしかできない強みは公開しないべき」といったことが主張されています。
これは私も非常に賛成で、真似できるものについては公開してしまい、それを利用してくれる人を増やして早期にプラットフォーム化することが勝利の秘訣だと思います。 一方で、自分達にしかできない強みは公開しないでおくことも重要です。
インダストリー 4.0
その他、読んでいて勉強になった点の 1 つは、インダストリー 4.0 におけるキーワードの 1 つである「管理シェル」について簡単に解説されていたことが挙げられます。
インダストリー 4.0 という単語とその雰囲気くらいは知っていたのですが、「管理シェル」などの具体的な技術要素については全く知らなかったので、面白いと思いました。
インダストリー 4.0 についてはきっかけがないとあえて勉強しようと思う機会は多くないと思いますが、意外と勉強してみると面白いのかもしれません。
おわりに
最後に、この本を読んでいて「たしかにそうかもしれない」と思ったこととして、1 つ引用します。
インターネット企業が革新を起こした分野は、小売りと広告だけ。この両分野の合計は、米国の GDP (国内総生産) 約 19 兆ドルのわずか 7 % にしか過ぎない
今後 GDP におけるインターネットや IT が占める割合自体が向上したりすることも考えられますが、まだまだデジタル化が進んでいない分野があることも事実です。
そういった分野をデジタル化できないか考えてみるのも面白いかもしれません。
この本でも解説されていますが、そもそも「DX」というのは既存の何かを自動化するといったものではありません。 本来「DX」とはどういうものなのかを知りたいという方は、一度この本を読んでみてもいいかもしれません。